鼠径部ヘルニアとは

 鼠蹊部というのは、体の表面から見ると左右両足の付け根の若干内側になります。さらにこれを体内の筋肉の構造で見ると、おへそのあたりから下部に向かって腹直筋という筋肉が覆っています。

 腹筋を鍛えるというのは、この筋肉を鍛えることですが、様々な運動で酷使される筋肉です。また呼吸や排便、咳などにも関係しています。そのことは鼠蹊部ヘルニアの手術を体験するとよく分かります。

 一方足の付け根付近にも筋肉があるみたいですが、この筋肉は、腹直筋と結合しているわけではなさそうで、簡単に言えば両者の間に隙間があるということです。

 つまり大きな二つの筋肉が鼠蹊部近辺を境にして接近しているというイメージでしょうか。2枚の大きな筋肉の板が接しているという事です。

 次にこれを腹部の断面で見ると、一番表面が皮膚、次が筋肉、さらに腹膜、小腸や大腸等の内臓という順番で並んでいます。

 問題は、2枚の筋肉に境目があるという事で、通常はピッタリ接していると思われますが、加齢や腹部への強い圧力等により内部の腸が腹膜を内側から押し、そこに筋肉の隙間があると、その隙間を押し広げるように外部に膨張するという事です。

 私はこの説明を読んで、お正月に食べるお餅を連想しました。お持ちの表面は固いのですが、熱を加えることによって内部の圧力が加わり、やがて表面の割れ目部分からお餅が膨らむというのと全く同じだなと思います。

 ちなみにヘルニアという言葉の意味は、体の組織の一部が飛び出た状態を表しています。

 当然ながら、普通ならその飛び出た盛り上がりを二つの筋肉が連携して抑え込んでいるわけですが、その力が弱いと御餅のように腹膜がはみ出て皮膚を押し上げることになります。

 これを体の外側から見ると、鼠蹊部が若干膨らんで見えることになります。ただし膨らみが小さい場合は、見ただけでは分からない場合もあります。

 また多少膨らんでいても、隙間から若干腹膜が飛び出ただけの状態なら、腹の上からそ〜っと膨らみを押してあげると、膨らみがそのまま内部に吸い込まれるように消えていきます。

 この状態なら、大きな問題になることはないのですが、そういったことを何回か繰り返していると、筋肉の隙間自体がどんどん広がってしまい、内部に押し込んでもすぐに飛び出してきたり、そもそも元に戻らないという状態が生まれます。

 それでも膨らんだ状態のままなら問題はなさそうですが、怖いのは御餅のように内部が飛び出た状態のとき、何らかの力加減で筋肉の隙間が狭まってしまい、膨らんだ部分が孤立した状態になることです。

 もし膨らんだ部分に大腸等が入っていれば、便が流れなくなりますから、腹部に便がたまり大変なことになります。こうなると生死の問題が絡んできますので、早めに何とかしないといけないという論法になります。

 これが俗に「嵌頓」と呼ばれる状態のようで、だとすれば、私もそうでしたが、筋肉を鍛えればよいのではと考えがちです。しかし、いくら筋肉を鍛えても隙間を埋めることは出来ないと言われています。つまり直すためには、一般に言われているように手術しかないという事です。


鼠径部ヘルニアの初期症状


鼠径部ヘルニアとは


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