手術開始

 やがて手術室の準備が整ったということで、看護師さんに促されて手術室に入室。こういった場面はテレビのドクターX等で何回も見ていますが、手術台のべッドの上まで自分で歩いて行くのもなんか変な感じです。

 また自分がそこに横たわることになろうとは思っていませんでした。ちなみにドクターXのように、上から偉い人が手術の様子を観察するなんて言う窓はありませんでした。

 看護師さんから、「ちょっと狭いですけど、べッドの上に仰向けになって下さい」といわれ、結構高い位置にあるベッドにいったん腰かけ、足を持ち上げ横になります。

 「緊張すると血圧が上がるぞ」と思っては見たものの、基本的に無理ですね、心臓の動悸を感じます。周りでは数名の医師と看護師さんが準備のために動き回っています。

 最初に腕に血圧帯が装着されました。血圧測定は、手術中常時行われるようで、装着した瞬間から、おなじみの圧力が上腕に加わり、しばらくすると「ス〜ッと圧力が消えます。

 同時に手術室の壁面にその血圧が表示されます。さりげなく見るとやはり高い。興奮の極みにあったため、しっかりと記憶はしていないのですが160/100ぐらいあったと思います。

 血圧が高いと、メスを入れた瞬間に血がほとばしるのではないかと余計な気を使い、意識して深呼吸をしましたが、下がる様子はありません。

 看護師さんは、明るくそして優しく「緊張してますか?」と声をかけてくれ、少しは気持ちが落ち着きましたが、数値は全然下がりません。しかし手術の準備はどんどん進んでいきます。

 次に人さし指に血中酸素量を測定する洗濯ばさみのようなものがつけられました。数値を聞いておけばよかったなと後悔していますが、何も言われなかったので、特に問題はなかったようです。

 さらに心電図の電極が心臓のあたりに装着されます。するとその途端にテレビの手術室の映像で良く聞こえてくる、私自身の心音が「ピッピ」と鳴り始め、さらに緊張が高まります。

 「こりゃやっぱりいよいよ本格的な手術が始まるんだ」と思った瞬間血圧が上がり、動悸も早くなるのがはっきりわかります。テレビのドラマなら緊迫感が最高潮に達する場面です。

 次に点滴のための注射針の挿入。なんだかんだ言っても、手術中で一番痛かったのが、この点滴の針でした。なんと右手でやった1回目が失敗。左手の2回目が成功。

 「ズクッ」と注射針が入った瞬間が特に痛いですね。入ってしまえば採血と同じで、ほとんど痛みはありません。左腕の手首と肘の中間あたりで、いつも採血する肘の内側とはちょっと違っていました。

 「こんな場所に入れるんですか?」と聞いてみると、「はい、大丈夫です」という返事でした。

 次が「これがあるから手術を受けたくない」と思っていた脊椎麻酔です。看護師さんから「左側を下にして、横になって背中を丸めて」と言われ、いわゆる胎児の姿勢になります。

 「ありゃ予想と違うぞ」と思ったのは、お尻の尾てい骨の上あたりから、腰の上あたりまでの広い範囲をアルコール消毒しているようです。次にその部分に暖かい布のようなものがかぶさってきました。

 皮膚麻酔の一種かなと思いましたが、よくわかりません。(後で調べましたが、やはり麻酔だったようです)

 私が何をされるのかビクビクしているのが分かったのか、医師が「痛くなる時は声をかけますから、それまでリラックスしてください」と言いながら、脊椎のあたりを指で探っています。

 やがて、「チクッとします」という声で、「はい」と力なく答えるしかなく、「ザクッ」という痛みを待ちかまえました。ところが予想に反して、本当にチクッとしただけで、逆にびっくり。

 「ありゃ?これで脊髄に注射針が入っているのか?」と逆に不安になりました。何回か違う場所でチクチクしたような印象もありましたが、やがて「順調に薬が入っています」という声を聴いて、「あれもう麻酔が始まっているんだ」とかなりびっくりしました。

 さらに「お尻が熱くなってきませんか?」と言われ、全身のセンサーを足の方に向けると、何やら太ももが「ホワ〜ン」と暖かくなってきたので、そう告げると、「良い傾向です。麻酔が効いている証拠です」と言われました。

 やがて麻酔が終了。「じゃあ姿勢を元に戻します」と言われてからが実に不思議。仰向けにしてもらいましたが、腰から下の感覚が全くありません。足が延びているのか曲がっているのか、それこそ切り取られているのか、全く不明です。

 不安になって、「足はどうなっているんですか」と聞くと、「ちゃんとまっすぐ伸びていますよ」という返事。あえていえば、腰から下がなんか台の上に乗って浮遊している感じでしょうか。


あっという間に手術終了


手術


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