麻酔が切れると強烈な痛みが

 ベッドに落ち着いて天井を見上げながら、意識を下半身に集中しますが足の感覚がまったくありません。左手には点滴がつながっていましたので、ゆっくりと右手を動かし、腰のあたりに持っていくと、何やら堅い箱のようなものがあります。

 「なんだこれは。下半身が堅い木の箱に入っているのか」という想像をしてしまいましたが、なんのことはない自分の腰骨です。

 しかし触っても、腰を触られたという認識を脳が処理できないようで、手の感触から、そこに何か物体があるけどなんだか分からないと認識しているようです。これは面白い経験です。

 脳というのは、手の触感と腰の皮膚への両方の感覚を統合して、「あ〜今腰を触っているんだ」という認識に至るようです。

 とはいうものの、何となく足がしびれているような感触もあり、ちょっと動かしたいという欲求が出るのですが、その脳からの指令が胸のあたりで消えてしまう感触は不気味です。

 「こりゃまあ、どうにもならん」と思って、仰向けのままうつらうつらしていると、5時を過ぎたぐらいだと思うのですが、麻酔が少しずつ切れてきた感触が表れました。

 麻酔が切れ始めたと分かったのは、最初に散々触っていた腰骨の感覚が戻ってきたこと。ここでようやく先ほど木の箱のようなものだと思っていた部分が、自分の腰だったということが分かってきました。

 さらにしばらくすると、腰から太もも、さらに右足全体の感覚が少し戻ってきて、寝たまま足の先端をちょっとだけピクピク動かすことができるようになりました。しかしなぜか手術をした左側は麻酔がまだ効いています。

 6時を過ぎると、左足にも感触が戻ってきましたが、その感触を確かめようと、ちょっと体の左側部分に力を入れた瞬間に、鼠蹊部に「ガツン」という痛みが走ります。

 「これが術後の痛みかあ」なんて最初は暢気に構えていましたが、やはりかなり痛い。とにかくちょっとでも動くと痛いので、足の感触が戻っても、全く動けません。痛風の症状みたいだなと感じました。

 そんな中、男性の看護師さんが食事を持ってきてくれ、ついでに点滴針を抜いてくれました。これで上半身の自由度が大きくなりました。さらに食事のため、電動ベッドを少し傾けてくれました。

 電動ベッドですが、後で聞いたところによると、個室だけに設置されているようで、通常の場合は痛みが強いので、自力では起き上がれないので、看護師さんの手を借りて起き上がったりするとのことでした。

 電動ベッドの場合は一定の速さで、自分の痛みに合わせて少しずつ傾けることができるので、これは助かりました。しかし上半身が少しずつ起き上がっていくたびに、かなり痛い思いをして、思わず「イタタタ!」という声が出ます。

 看護師さんも、「手術直後のこの時間は皆さん同じように痛みを訴えます」と冷静に、ニコニコしながら教えてくれましたが、こちらは痛みでとても笑う気になれません。

 というわけで、なんとかベッドで少し上半身を起こして食事です。朝昼と昼食を食べていなかったので、腹だけは空いています。味の方も想像以上においしくて、とりあえず完食しました。


トイレを済ませて就寝へ


手術


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